予約投稿。今年も手を合わせます。
No.87, No.78, No.77, No.76, No.75, No.74, No.73[7件]
幸運 #詩
冷たい汗に目醒めて
こみあげる胆汁の床へ手をつく
むくんだ春の朝
無痛に痺れた日差しの底で
清涼な液体の管が私を繋留している
キャスターつきの点滴台ではなく
いまにも
窓の外へ揺れはじめるべき夏の影へと
冷たい汗に目醒めて
こみあげる胆汁の床へ手をつく
むくんだ春の朝
無痛に痺れた日差しの底で
清涼な液体の管が私を繋留している
キャスターつきの点滴台ではなく
いまにも
窓の外へ揺れはじめるべき夏の影へと
ヴィトルト・シャブウォフスキ「踊る熊たち」を読み始めました。
「独裁者の料理人」がとても面白かったので期待。
「独裁者の料理人」がとても面白かったので期待。
原田マハ「楽園のカンヴァス」 #読了
売れに売れたアート・ミステリー。面白かった。ルソーが、間違えて描いた部分のみを描き直すことのできない不器用な性格であったというエピソードを出したあとに二枚目の「夢」の可能性を示唆するなど、話の組み立てが秀逸。
途中まで、面白いがそれだけで終わりそうな気もしていたのだが、登場人物達が「物語」を読み進めるにつれて印象的なシーンが増える。もちろんそれは実際の出来事ではないのだろうが、愚直に自身の芸術を信じた画家の生き様がこの作品に厚みをもたらしていると思った。
関係ないが、作者が原田宗典の妹ということをWikipediaで知った。
売れに売れたアート・ミステリー。面白かった。ルソーが、間違えて描いた部分のみを描き直すことのできない不器用な性格であったというエピソードを出したあとに二枚目の「夢」の可能性を示唆するなど、話の組み立てが秀逸。
途中まで、面白いがそれだけで終わりそうな気もしていたのだが、登場人物達が「物語」を読み進めるにつれて印象的なシーンが増える。もちろんそれは実際の出来事ではないのだろうが、愚直に自身の芸術を信じた画家の生き様がこの作品に厚みをもたらしていると思った。
関係ないが、作者が原田宗典の妹ということをWikipediaで知った。
白水uブックス「アメリカ幻想小説傑作集」収録
ヘンリー・ジェイムズ「なつかしい街かど」(志村正雄訳)より #引用
ヘンリー・ジェイムズ「なつかしい街かど」(志村正雄訳)より #引用
「ああ!」とブライドンはたじろいだ──彼が自分の正体であると証明されたからか、彼の指が欠けているからか。それから「彼は年収百万ドル」と明快につけ足した。「でも、彼には、きみがいない。」
「だから彼は違う──そうよ、彼は──あなたじゃない!」と彼女はささやき、彼は彼女を胸に引き寄せた。
生きていく上での楽しみが何もない。
気を抜くとそんな言葉が頭の中で増殖する。
虚無感。
虚無感というのは文字通りの虚無の感覚──何もない虚空に漂う感覚ではない、と思う。
どちらかといえばそれは、周囲に迫る息苦しい壁、迫害と剥奪の感覚である。
薄暗く息の詰まるこの部屋に、せめて窓を開けなければならない。
多くの人が、自己犠牲と公への奉仕と感謝の心持ちの中に、光さしこむ「窓」を見出してきた。
剥奪の感覚に対抗する有効な手段は、自ら与えることだからだ。奪われることをよしとする。代わりに自分も必要なものを得る。そのようにして、己が人生の主権を回復する。
私の場合は、まだその境地にまでは行けない。虚無感の手触りがあるとき、人生に対する「被害者」でいようとする自分をまずは自覚する。
そしてこう思うことにしている。
愛する人が生きていてくれるじゃないか。
愛する猫がこちらを見つめているじゃないか。
いつか全てを喪う日がくるとしても、彼らがそこにいてくれたことは真実、この侘しい人生に射しこんだ真実の光なのだ。
これは私にとって嘘ではない。嘘ではないということ自体、奇跡のような幸運であると思う。
だから、そう思うことにしている。
気を抜くとそんな言葉が頭の中で増殖する。
虚無感。
虚無感というのは文字通りの虚無の感覚──何もない虚空に漂う感覚ではない、と思う。
どちらかといえばそれは、周囲に迫る息苦しい壁、迫害と剥奪の感覚である。
薄暗く息の詰まるこの部屋に、せめて窓を開けなければならない。
多くの人が、自己犠牲と公への奉仕と感謝の心持ちの中に、光さしこむ「窓」を見出してきた。
剥奪の感覚に対抗する有効な手段は、自ら与えることだからだ。奪われることをよしとする。代わりに自分も必要なものを得る。そのようにして、己が人生の主権を回復する。
私の場合は、まだその境地にまでは行けない。虚無感の手触りがあるとき、人生に対する「被害者」でいようとする自分をまずは自覚する。
そしてこう思うことにしている。
愛する人が生きていてくれるじゃないか。
愛する猫がこちらを見つめているじゃないか。
いつか全てを喪う日がくるとしても、彼らがそこにいてくれたことは真実、この侘しい人生に射しこんだ真実の光なのだ。
これは私にとって嘘ではない。嘘ではないということ自体、奇跡のような幸運であると思う。
だから、そう思うことにしている。
白水uブックス「アメリカ幻想小説傑作集」収録
ナサニエル・ホーソーン「若いグッドマン・ブラウン」(志村正雄訳)より #引用
ナサニエル・ホーソーン「若いグッドマン・ブラウン」(志村正雄訳)より #引用
『お互いの心を頼って、きみたちはいまも美徳がすべて絵そらごとなわけではないと思っていた。今度こそ夢が覚めただろう。悪こそ人間の性なのだ。悪こそ、きみたちの唯一の幸福なのだ。もう一度言おう、よく来た、わが子たちよ、きみたちの仲間の交わりに』