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2023年の投稿59件]

2023年12月 この範囲を時系列順で読む この範囲をファイルに出力する

目が覚めたら枕元に赤い袋があり、その隣に飼い猫が気難しい顔をして座っていた。
クリスマスの朝にプレゼントが置いてあるなんて何年ぶりだろう、子供時代以来かもしれない。

エンデの「はてしない物語」が枕元にあった朝を思い出しました。何だか涙のようなものがすっと胸の奥から広がってくるのを感じたが、猫の顔が面白くて笑ってしまった。

日記

車窓から #詩

あおい光が夜の奥をよぎる

ひとつ

息をする間に

またひとつ

かつて私を呼びとめたもの

朝に枯れる花のように

早くも希望の残り香を立てている

夜に属する光

人工の。


今でも私は

どうしようもなく置いてくる

ガラスを曇らす雨滴と

もはや見分けのつかぬひと雫を

闇の彼方にまたたく

踏切のあおい光のもとへ

断片

眠り #詩

太陽光発電のパネルと

キャベツ畑で大地を覆って

わたくしたちは眠りにつきます

暗く涼しい土の中で

目を閉じて横たわって

また起きられたらいいけれど

わからないから手を繋いで


誰も住まない団地のベランダ

洗濯物がはためいています

電車は律儀に基地へと帰り

最後の水で洗われました

わたくしたちがつくったもの

愛したもの

のこしたかったもの

かいた地図


わたしにだけ朝が来てしまったらどうしよう

土から這い出て、真っ暗闇に

弱った手足でベランダへよじ登り

誰かのバスタオルで体をつつんで

裸足にキャベツ畑の土を踏む

確かな冷たさを指先に見つけ

外葉の夜露に喉を鳴らして


ひと息ついて思うでしょうか

とても、とても静かだと

その日を思ってわたしはさびしいのです

眠りにつく前からはやくも

まぶたを夜露が濡らすほど

断片

私は元来悲観的すぎるほど悲観的な人間なわけですが、歳を重ねた結果なのか、ずっと悲観的でいる体力がなくなってきたように感じています。
ただ単に悲観的な態度でいることは百害あって一利なし。それも頭ではわかっているし、とにかくこの頃は悩み苦しむだけで疲れる。体力が要る。なけなしの体力気力をこんなことに使いたくない。
そんなわけで、ついには何かと思い煩うのをやめて思考停止の境地にある今日この頃。私の乏しいキャパシティを、しょうもない苦悩の堆積がとうに埋めてしまったのでしょうか。ひとまずは降り積もった悲しみや心配事の上に腰掛けて、沈む太陽や昇る月を眺めています。
季節は巡る、どうせ足を止めるならせめて陽当りのいい場所で。

呟き

2023年11月 この範囲を時系列順で読む この範囲をファイルに出力する

書いている小説に早いところもう一区切りついてほしくて苦しく、でも書いているあいだは飛ぶように楽しい。
朝起きた瞬間に小説のことを思うと、悪夢の残滓がすっと溶けて消えます。
このところ本当に眠りが悪いのだが元気に起きられる。躁じゃないと思うけれど気をつけます。どなた様もご安全に。

日記

2023年10月 この範囲を時系列順で読む この範囲をファイルに出力する

しばらく投稿していないなあと思っていたらなんと1ヶ月以上が経っていた。はやいこわいやばい。
相変わらず紙の本を読んだり電子書籍を読んだりオーディオブックを聴いたりしているだけの日々ですが、夏の新型コロナ罹患後に思いついて書き始めた中篇?がひとまず最後まで辿りついたところ。膨大な量の手直しが待っていますが一番好きな工程なので楽しく苦しみたい……。

ガザ地区の状況については、一市民のレベルで心を痛めています。土地と歴史に絡む問題が複雑過ぎるので(しかし十分に単純な紛争なんてあるだろうか?)、ただ人間として業を感じています。ウクライナの方も終息の気配なし。私は家で本を読んでいる。

最近の読了リスト。
#Audible にて読もうと思いつつ後回しにしていた話題作やらを。
齊藤彩「母という呪縛 娘という牢獄」、井戸川射子「この世の喜びよ」、高瀬隼子「おいしいごはんが食べられますように」、村上春樹「猫を棄てる 父親について語るとき」、川上未映子「春のこわいもの」。

最近これといって読み進めている紙本がないのもあり、Kindleに積んでいる大量の青空文庫本をちまちま消化しています。
再読の夏目漱石「こころ」と坂口安吾「堕落論」、児童向けの翻案しか読んだことがなかったと思われるゴーゴリ「外套」。

読んだことあるはずの作品でも全く自分のものになっていないことがわかり多少ガッカリするが、飲んだ水みたいに体を通り抜けて今日を生かしてくれるならそれでもいいと思う。たぶん渇きを潤してくれた日も熱を和らげてくれた日もあるのだろう、汗や涙に意味はありますか、なくてもきっと効能はある。

日記

2023年9月 この範囲を時系列順で読む この範囲をファイルに出力する

最近小説ばかりだなあと思い #Audible で「母という呪縛 娘という牢獄」を聴き始めました。
本人による手記だと思い込んでいたのだが、本人の手記や周囲の証言などを含め、彼女を取材した共同通信の記者が丁寧にまとめた本人との「合作」でした。
犯行を決意した契機は意外にも、医学部合格を目指して母親に強いられた九年間にも及ぶ浪人生活の中ではなく、医学部を諦めたその後に訪れたという。
暗澹たる気持ちになりますが最後まで聴きたいと思います。

呟き

ケアリー「堆塵館」を読み終え、 #Audible で少しずつ(但し1.35倍速で)聴いていた「プロジェクト ヘイル・メアリー」上下巻#読了
今は京極夏彦「姑獲鳥の夏」とルルフォの「燃える平原」を再読しつつ隙間時間にP・K・ディック短篇集(トータル・リコール他)を聴いています。ディックは長篇ばかり三作品読んだことがあるのですが短篇だとまた印象が違うなあと感じる。

呟き

ケアリー「堆塵館」、夢中で読んでいたらそろそろ読み終わりそうです。

家長ウンビット・アイアマンガーが孫息子クロッドにアイアマンガー家の来歴を語って曰く
『この悪臭を放つ鼻摘みもの、粉々になったもの、ひび割れたもの、錆びたもの、ねじを巻きすぎたもの、欠けたもの、臭いもの、醜いもの、有毒なもの、使い道のないもの。そういったものすべてをアイアマンガー一族は、なにものにも代えがたい愛情をもって遇した。そうした嫌われたものに注ぐアイアマンガーの愛情に勝るものはこの世にはない。われらが所有したものものは茶色で、灰色で、黄ばんでいて、染みだらけで埃だらけで腐臭を放っている。われらは白徽の王だ。徽すらも所有していると私は思っている。われらは徽の大家(たいか)なのだ』 #引用

呟き