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No.89

眠り #詩

太陽光発電のパネルと

キャベツ畑で大地を覆って

わたくしたちは眠りにつきます

暗く涼しい土の中で

目を閉じて横たわって

また起きられたらいいけれど

わからないから手を繋いで


誰も住まない団地のベランダ

洗濯物がはためいています

電車は律儀に基地へと帰り

最後の水で洗われました

わたくしたちがつくったもの

愛したもの

のこしたかったもの

かいた地図


わたしにだけ朝が来てしまったらどうしよう

土から這い出て、真っ暗闇に

弱った手足でベランダへよじ登り

誰かのバスタオルで体をつつんで

裸足にキャベツ畑の土を踏む

確かな冷たさを指先に見つけ

外葉の夜露に喉を鳴らして


ひと息ついて思うでしょうか

とても、とても静かだと

その日を思ってわたしはさびしいのです

眠りにつく前からはやくも

まぶたを夜露が濡らすほど

断片