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No.138

雨模様と妙にはしゃいだ暑さのあいだを行き来するうちに音もなく梅雨入り。

実家の庭の紫陽花が今年も綺麗に咲いた。
この紫陽花はね、と母が語るのを何度聞いただろう。ずっと前の母の日に、あなたがお小遣いで買ってきてくれた小さな株を置いておいたらね。植木鉢の底を突き破って、庭に根を張って、こんなに大きくなっちゃったんだよ、すごいよね。

昨秋に子供が生まれて(と書くのは卑怯に感じるくらい、それは私が産んだのだが)数日間NICUに入っていたのだけれど今は幸いすくすくと育ってくれている。
声を立てて笑う。はいはいをする、歌っているつもりで私の歌に合わせて声を出す、猫の尾に手を伸ばす(猫は逃げる)。
よくも悪くも、自分の命の意味が変わってしまったと思う。
「子は鎹」であるかはさておき、ふわふわ浮いていた自分の存在に打ちこまれた楔、ではある。死ねない。

死ねなくなって迎える初めての誕生月、庭の紫陽花が、地上から空へ降る雨のように咲く。強く強く土に張った根から吸い上げた雨水が、光となって天へ還ってゆく。

日記