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No.140

#Archive 投稿, 2021年6月25日
「書かれた最初の」

 赤ん坊というその呼び名の通り真っ赤な皮膚、まだひらかない眼、母に抱かれている生まれたその日の姿が写真に残っていて、病院のベッドの枕元に貼られていた紙の実物と共にアルバムに収められている。

 30年以上が過ぎて眺めるその紙には、母の名と、その子である旨と、祝福の言葉が記されている。おめでとうございます、それは私に対するものではまだなかったと思う。

 言葉がわかるようになるころ、「誕生日」を意味が追いかけてきて、やがて追いぬいていった。

断片