or 管理画面へ

No.69

学生時代、Wordに日記を書いていました。毎日というわけではなく、少し書いて間が空き、また久しぶりにファイルをひらいてキーボードを叩き始めると綴りたいことが次々に溢れ出して我ながら驚く。その繰り返しで、ときには半年以上も空いたあれを日記とは呼ばないのかもしれません。

大学三年くらいのころから、それまで予定を書くだけだったスケジュール帳に日記を書くスペースが加わり、食べたもの読んだ本などを記録している時期が見られます。こういうのはあとから読んで意外と面白くない。
かと思えば懐かしい固有名詞が出てきて、さらりとしたその登場の仕方に胸をつかれることもあります。住んでいる部屋で撮った写真をあとで見たとき、写したかった珍しい何かより、背景になにげなく映り込んでいる別の何かのほうに心を掴まれることがあるように。当時それはあたりまえに存在していて、撮るほどのこともなかった。その事実こそが、時を超えて胸を締めつけるのです。

何かを敢えて記録することは何かを捨て去ることであり、難しいものだと思います。私には2011年7月頃から長期にわたる手帳の空白が何よりも雄弁な記憶であります。回復に向かう世の中の流れとは裏腹に力尽きていった、私の中の「日常」の沈黙です。

呟き