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No.94

骨つき肉 #詩

いつもの精肉売り場

あなたの肩肉がパッケージされていた

うす切りの

二割引きで


買ったけれど、台所

煮ていいのか

焼けばいいのか

思わず冷凍庫にしまいこんで


息をついた

明日は売っていますか

あなたのもも肉、すね肉、ばら肉

タンにホルモン、目玉、ハツ


うす濁りの水をシンクにあけて

今日も新しくしてやります

花弁が色褪せるより先に

根が腐るなんて、怠惰だろうから


あれから何度かよっても

精肉売り場にあなたは見当たらず

わたしは手ぶらで帰る

そうしてだんだん痩せる


やはり食わねばならぬのか

冷凍庫あけて

そっけないピンク色した

うす切りの二割引きの


あなたに下味をつけて

フライパンでしっかり焼いて

食べましょう、食べるとも

だから明日こそは売っていますか


あの日わらいながら動かした

大きなあなたの影

暗い、名前のない

ひとのかたちした骨つき肉

断片