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骨つき肉 #詩
いつもの精肉売り場
あなたの肩肉がパッケージされていた
うす切りの
二割引きで
買ったけれど、台所
煮ていいのか
焼けばいいのか
思わず冷凍庫にしまいこんで
息をついた
明日は売っていますか
あなたのもも肉、すね肉、ばら肉
タンにホルモン、目玉、ハツ
うす濁りの水をシンクにあけて
今日も新しくしてやります
花弁が色褪せるより先に
根が腐るなんて、怠惰だろうから
あれから何度かよっても
精肉売り場にあなたは見当たらず
わたしは手ぶらで帰る
そうしてだんだん痩せる
やはり食わねばならぬのか
冷凍庫あけて
そっけないピンク色した
うす切りの二割引きの
あなたに下味をつけて
フライパンでしっかり焼いて
食べましょう、食べるとも
だから明日こそは売っていますか
あの日わらいながら動かした
大きなあなたの影
暗い、名前のない
ひとのかたちした骨つき肉
いつもの精肉売り場
あなたの肩肉がパッケージされていた
うす切りの
二割引きで
買ったけれど、台所
煮ていいのか
焼けばいいのか
思わず冷凍庫にしまいこんで
息をついた
明日は売っていますか
あなたのもも肉、すね肉、ばら肉
タンにホルモン、目玉、ハツ
うす濁りの水をシンクにあけて
今日も新しくしてやります
花弁が色褪せるより先に
根が腐るなんて、怠惰だろうから
あれから何度かよっても
精肉売り場にあなたは見当たらず
わたしは手ぶらで帰る
そうしてだんだん痩せる
やはり食わねばならぬのか
冷凍庫あけて
そっけないピンク色した
うす切りの二割引きの
あなたに下味をつけて
フライパンでしっかり焼いて
食べましょう、食べるとも
だから明日こそは売っていますか
あの日わらいながら動かした
大きなあなたの影
暗い、名前のない
ひとのかたちした骨つき肉
初恋 #詩
スプーンにのせた心臓が
どくどく
震えていました
陽の透けた髪
かすかな空調の音
ざわめき、街の
溶けてしまいたかった
夏よりもはやく
一秒後にきっと
氷が鳴るんだろうって
どうしたわけか
わかっていたから
スプーンにのせた心臓が
どくどく
震えていました
陽の透けた髪
かすかな空調の音
ざわめき、街の
溶けてしまいたかった
夏よりもはやく
一秒後にきっと
氷が鳴るんだろうって
どうしたわけか
わかっていたから
夏の解剖 #詩
西瓜の種を指先で
ほじくり出して白い皿に落とす
硬質なピアニシモの納骨
樹の影が揺れる
また手をよごす
うすく赤く甘く
唇は濡らそう、果汁に汗に
貪欲なまでの無頓着さで
ふと
思い出しただけのように
さりげない調子で
しばらく前に席を立った
あなたの分にもほら、塩をひとつまみ
百万年前の海水を
かわかした
ものです。
西瓜の種を指先で
ほじくり出して白い皿に落とす
硬質なピアニシモの納骨
樹の影が揺れる
また手をよごす
うすく赤く甘く
唇は濡らそう、果汁に汗に
貪欲なまでの無頓着さで
ふと
思い出しただけのように
さりげない調子で
しばらく前に席を立った
あなたの分にもほら、塩をひとつまみ
百万年前の海水を
かわかした
ものです。
あれは三万五千年前に
噴き出した火焔の白い熾
大地のきずはいつしか治り
あれは四千年前に
運行していた星の軌道
指さされたその彼方で
あれはいつだったでしょうか
鉄の翼がのこした痕
巨大な悪意の膨張
立ち止まって
口あけて
指先離れた風船を
匿っている白い城砦
いつまでも、いつまでも
scratch, scratch, scratch
いたずら者の小鳥が石壁にとまり
短い尾羽をふるわせている
平気です
平気でないでしょうに
scratch, scratch
白銀の画鋲が頭ひからせて
画用紙をひろびろと支えている
待つならば忍耐強く
絵筆をめいめい携えて
群れなし降りてくる亡霊は
あんまりゆっくりなものですから
刻みつけられては揺れる薄皮
フリップブックでさあ御覧じろ
あれはご存じ
これはいかが
知っていますもちろん
いつのことだったでしょうか
scratch, scratch 時の点描
潤んだ目玉のつけた引っ掻き傷
きっと私もそのひとつです
scratch, scratch
空の城砦から
小鳥が今にも落ちてゆきます